第33章 無双学園生徒会執行部。『Summer vacation』
夜10時。
はむくりとベッドから起き上がる。
「寝過ぎた…」
三成先輩は起きているだろうか。
起きていますように、そんな思いを抱いては部屋を出た。
(どうしよう……)
辿り着いた三成の部屋の前、五分も前からここに立っているのにノックをする手が動かない。
自分の耳にもハッキリと聞こえる大きな鼓動。
緊張で冷や汗も出てくる始末だ。
「よし…!」
グッと唇を噛み締めて意を決してノックしようと手を動かした時、突然に扉が開いた。
「!!」
「…か?」
「み、み、みつ、なり先輩…!」
「どうした、もう時間も遅いのだぞ」
何か用かと聞く三成には口をパクパクさせるだけで言葉を発せられない。
しかし、お礼を言いに来たのだろうと自分を心の中で叱咤し三成の顔を見つめる。
「あの、先輩…海では、助けて頂いてありがとうございました…」
「お前…それを言いに来たのか?」
「はい…昼間ちゃんと言えてなかったので……」
恥ずかしそうに俯くに三成は優しい視線を送る。
そんな目で見ないで欲しい、折角落ち着かせた鼓動がまた騒ぎ出してしまう。
この音が先輩に伝わる前に、立ち去ろう。
「じゃあ失礼します!」
深々と頭を下げて足早に立ち去ろうとしたがそれは三成によって阻止されてしまう。
「待て」
「……!」
「お前の部屋はそっちじゃないだろう」
の部屋はこの別荘の二階。
向かおうとした先には玄関しかないはずだった。
「…さっきまで寝過ぎちゃって、今からすぐに寝付けそうにないので別荘の周りを歩こうかと思って…」
「今から?」
「はい」
「馬鹿か!こんな時間に一人で出歩くな」
「す、すみません!…部屋に戻ります」
しかし、部屋に戻ろうとしたの腕を三成はそっと掴む。
「先輩…?」
「俺も行く、それならば問題ないだろう」
「………っ」
夜の海は昼間と違う顔を持つ。
昼間はあんなに輝いてたくさんの人を包み楽しませてくれていたのに、夜は吸い込まれたら戻って来れないのではないかと思う。
空も、海も黒。
少し怖いのに、自然と繋がれた手が何処かを安心させていた。