第32章 無双学園生徒会執行部。『August』(逆ハー)
「清正先輩…?」
「おう、早いな」
「いえ、私は掃除を……清正先輩こそ今日は早いですね」
「……まぁ、たまにはな」
生徒会室の扉を開けると清正先輩が既に席についていた。
私の次に来るのは大体いつも隆景君だったから珍しいなと思っていると、
「…お前と二人でいられんなら早く来るのも悪くねぇかもな」
「…!!」
…とんでもない爆弾を落とされた!
顔に熱が集まる。
何も応えられず口をパクパクさせているとククッと笑い声が聞こえた。
「水槽の金魚みてぇ」
「きんっ…?!もう、清正先輩!!」
金魚と言われた事に対して反論しようとした次の瞬間、ガラリと大きな音を立てて扉が開いた。
「おはよう!先輩っ!」
「…ぐえっ!」
突然飛び付かれバランスを崩しそうになったものの、棚に掴まって何とかその場に踏ん張る。
我ながらとんでもない声が出たものだ。
ぎゅうぎゅうと抱き着いてくる人の顔なんてもう見なくたって誰だかわかる。
「豊久くん…重い……!どいて!!」
「豊久!お前毎回毎回…好き放題触ってんじゃねぇよ!」
「だって先輩フワフワして気持ちいいんだ!それに良い匂いする!」
「嗅がないで。それから清正先輩も好き放題触るとか誤解のある言い方やめて下さい!」
抱き着いていた島津豊久を何とか引き離し大きな溜め息をつく。
「この暑いのに騒ぐな、更に気温が上がるだろう」
少し苛立ちを含んだその声のする方を見れば、見事に眉間に皺を寄せた三成先輩とその後ろでニコニコ笑う隆景君。
「おはよう皆、話を始めようか」
そして最後に生徒会へと入ってきた会長の一言で皆席についた。
しばらく各自で仕事を進めていると会長のペンが止まり、視線が私に向いてる事に気付いた。
「あの、何か……?」
「あぁ、ごめん」
ドキドキしながら尋ねてみると爽やかな笑顔が返ってきた。
暑さを微塵も感じさせない涼やかな笑顔。
この人は本当に笑うだけでその場の空気を変えてしまうんだなぁ。
「の歓迎会の意を込めて海でも行かないかと思ってね」
「へ……?」
「海!!行きたいっ!俺!!」
最初に反応したのはやっぱり豊久君だった。