第29章 無双学園生徒会執行部。『May』(逆ハー)
「私も貴女を名前で呼びたいので、私の事も名前で呼んでくれませんか?」
「え……」
特進クラスの首席で文化部の王子、笑えば花咲く小早川隆景を名前で呼ぶの?
誰が???
私が??!!
「駄目、ですか…?」
「いや…駄目じゃないです、けど………」
「」
「!!」
「お願い」
その顔でこっちみないで……!
流される…!絆される…!!!
「……わかったよ」
「ありがとうございます」
いきなりどうしたんだと聞いてみれば、清正先輩を名前で呼んでいるのが羨ましかったと素直に言うのだ。
羨ましいとか、そんな事を面と向かって言われたら恥ずかしくなるよ…。
大体、清正先輩の加藤の姓がたまたま合気道部にもう一人居ただけなんだけど…。
うう…。
はぁ…とバレない程度に息をついて窓に向かう。
空気の入れ換えをするために窓を開けた。
新鮮な朝の空気。
5月のこの風が私は好きだ。
「気持ちいい……」
目を閉じてしばし風に当たって顔の熱を冷ます。
「やっぱり…良い香りがします」
「ぴゃっ……!!」
「ぴゃ?」
「ここここ、こばっ…!!ちちち近…!//」
「違いますよ?」
「うぁ…//たっ…たか、かげ君…近い!!」
気付けば窓枠に両手が置かれていて、私の逃げ出す隙間がない。
せめてもの抵抗で背を向けるも彼の行動が見えなくなったのが良くなかった。
「可愛い人ですね、は」
「っ…!」
耳元で聞こえる柔らかな声。
吐息が耳を擽った。
勘違いしてはいけない!これはからかわれてるだけなんだから!!
「私!!教室に行くね、また放課後に!隆景君!!」
腕をくぐり抜ける様にして一目散に扉へと向かう。
ドアノブに手を掛けようとしたら扉が先に開いたので驚いて顔を上げた。
「あぁ、か。おはよう、掃除かい?」
「会ちょ……//」
「?何?顔に何か付いているかな?」
「いえ!おはようございます!失礼します!!」
恥ずかしくて恥ずかしくて、会長の顔もまともに見られない。
こうなったらさっさと教室に行って一限目の予習をしていた方がいい。