第29章 無双学園生徒会執行部。『May』(逆ハー)
「…隆景、何かしたのか?」
「さぁ…どうでしょう」
含みを持たせた言い方に信之は静かに隆景を見つめ目を細めた。
「…珍しいな、お前が誰かに興味を持つのは」
「私は何も言っていませんよ、でも…そうですね、会長の考えている通りで大方間違いないと思います」
が開けたままになっていた窓を閉める。
この窓際まで追い詰めた彼女の顔は真っ赤で、驚いていた。
でも、名前を呼んでくれた。
あんな状況でも素直で律儀な彼女を思い出してクスリと笑う。
他にはどんな表情を持っているのだろう?
自分だけに笑顔を向けられたらどんな気持ちになるのだろう?
「…知りたいと言ったら、また貴女は驚くのでしょうか」
翌日の昼休み。
一瞬ザワリとした教室を不思議に思っては辺りを見回した。
「…!!」
な ぜ こ こ に !!
「あぁ、そこでしたか」
「!!」
彼が私の名前を呼ぶことで更に教室がざわついた。
「お昼を一緒にと思って来ました、まだこれからですよね?」
彼、もとい小早川隆景のこの爆弾発言でついに教室から女子達の悲鳴があがった。
私はまだ開く前だったお弁当箱を抱えて彼の腕を掴んで廊下へと飛び出した。
これ以上教室にいたら私の身が危ない、そう本能が感じ取る。
人のいない空き教室に辿り着いた所でようやく溜め息をもらし落ち着いた。
「あの…た、隆景君はなぜ…私と……」
「一緒にお昼を食べたかったので」
「………ここで、いい?」
「え?」
「隆景君とお昼食べてるなんて皆に知れたら私午後から落ち着かないよ、だからこの教室でいい?」
「……はい、もちろん」
にっこりと微笑む隆景君から視線を反らし椅子に座る。
どういうつもりなんだろう………。
「あぁ、でも…二人っきりですね」
「///!!!」
ホント、どういうつもりなんだろう…!!
優しいだけだと思っていた小早川隆景は実は意地悪なんじゃないかと思い始めた5月。
窓の外は、憎らしいほど爽やかに晴れ渡っている。
END.NEXT➡June