第13章 13日目
「あ、大将。」
「お、ニノちゃんもう帰ると?」
ここの大将は博多の人で気前がよく、いつもお世話になっている。
「うん、今日はね。ひとつお願いがあんだけど、俺の部屋に酔っ払った女の子入って来ちゃって。」
「うそ!大丈夫やった?」
「うん、大丈夫よ。それが、部屋間違えたみたいで、ずっと俺のことスミヒサ君って呼んでんのね?」
「あ、ああ!住久くんとこの!もしかしてじゃないかいな。アライグマっぽくなかった?動物系。」
「うーん、そう言われればそうかも。って言うの?」
「そうそ、住久くんが転勤やけん同期で集まっとると、ってと一緒におったと!?」
「うん、優しかったよ。」
「いい子なんやけど、ちょっと危なっかしかろぉーが、アイツは。」
「うん、まだ部屋で寝てるから、スミヒサくんに迎えに来てもらって?」
「おお、すまんね。次、おまけするけん!」
「んー大将、おまけはいいや。今度ちゃんこの店来たら教えて?」
「え?なんでまた。」
「うん、なんか初めて安心する人に会えたから、また話したいなって。」
あんまり深い意味に捉えられないように軽く言ったのに「・・・へぇ、」となにかを含んだ嫌な笑いをされた。
そうかと思いきや、「またおいで。」といつもの元気な笑顔で見送ってくれた大将はなんだか嬉しそうだった。
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