第13章 13日目
顔を上げると、目の前には知らない女が私を不思議そうに見つめる。スミヒサ?誰それ、何この子。よろよろと私の目の前に座る。相当酔ってませんか、お姉さん。
「そっか・・・寂しいよね、」
「え?」
「私達も・・・寂しい。でも、こんなテーブル濡らしちゃだめだよ!泣きすぎだよ!」
「・・・はい?」
「はい、ハンカチ、住久くんもうそれ風邪ひくレベルで凄いよ。」
私の目の前にハンカチを差し出す。状況が把握できず、ハンカチを受け取れずにいると「失礼」と言って前髪を優しく拭かれた。
「・・・」
頭を撫でられているような感覚で、何故か力が抜けた。誰かと一緒にいて、肩の力が抜けるのなんて、どれくらいぶりだろう。
「・・・ありがと、」
初対面の名前も知らない女の子にお礼を言った。
「うん、いいよ。頑張ろうね、一緒に。」
「うん」と答えると、濡れた前髪の隙間から見えた彼女の顔は優しく笑っていた。こんな人が近くにいるスミヒサくんが、羨ましくなった。・・・スミヒサくんが誰だかわからないけど。
「あ、のさ名前―・・・」
「zzz・・・」
こんな瞬殺で寝る人間を、大野さん以外に初めて見た。たった一瞬で気持ちよさそうに眠る彼女に笑いがでた。
「・・・また、会いに来ますよ。」
耳元にそう言い残してその部屋を出た。