第6章 6日目
「え!」
裏にある人気もない丁度いいその場所で、見覚えのある顔の綺麗な人が休憩中だった。
「…あ?」
ひい…!すみませんすみませんすみません!わざとじゃないんです、たまたまなんです!
あきらかに不機嫌な態度で私を見る、松本さん。
「お、邪魔しました!」
私が踵を返してその場から離れようとすると、ちょっと待って!と呼び止められた。
「…あ、ごめん、どうぞ。俺もう行かなきゃなんで。」
さっきの怖い顔は無くなって、眠たそうな疲れた表情で私に場所を譲ってくれた。
「…あ、りがとうございます。」
「エキストラ、の人ですよね?」
「そうです!よ、よろしくお願い致します!」
「…あ、はい。よろしくお願いします。」
綺麗な顔で笑った松本さんは、さすが国民的アイドルで、眩しすぎるくらいだった。…なんて言ったら二宮くん、俺は?とか言いそう。
ここには居ない彼のことを考えてふふっ、と声が出た。
「え、何。」
「あ、すみません!思いだし…笑いです。」
馬鹿、これじゃあまた変な人扱いだ。
「…変な人、」
や、やっぱり…。
松本さんが私の持ったお弁当に気付く。
「もらわなかったの?弁当。」
「あ、いえ…間違えて作ってきてしまいまして…」
するとぐぅ~と松本さんのお腹がなった。
「…はら、減った。」
とお腹を抑え、無言で私のお弁当をじっと見つめる。
ただならぬ沈黙の空気に耐えられなくなって、
「…た、食べますか?」
とお弁当を差し出すしかなかった。