第4章 4日目
「名前、何て言うの?」
初対面のその人は私に名前を聞いてきた。なんとなく取っ付きにくそうな感じだったけど、笑ってくれたし、敬語じゃないし、フレンドリーな人なのだろうか。
「あ、です、です。」
今まで顔を見れずに話ていたけれど、さすがに名前を名乗る時くらいは視線を合わせようと、体をその人へと向けた。
…あれ?やっぱり、見たことある気が…
ってナイナイ、そんなこと言ったらまた不思議ちゃん扱いだ。そんなの嫌。
一人で色々考えていると、目を合わせるその人が
「、」と私の名前を呼んだ。
しかも苗字ではない、下の名前。
お、親にしか呼ばれたことないのに…!
「よ、呼び捨てですか…」
「あれ、嫌?じゃあちゃん?さん?」
男の人に呼ばれる、その全ての呼び方が新鮮で、きっと今の私はゆでダコよりも凄いと思う。
「赤くならないでよ、」
またふふっ、と笑う。楽しそうな明るい笑い方じゃなくて、静かに笑いを堪えるような含み笑い。なんか…この人とても意地悪そうだ。
「お、名前は…」
「あれ、気付いてなかったんだ。」
え、やっぱり、やっぱり知り合いだったの?
「やっぱり、どこかでお会いしたこと…」
私がそう言うとその人はまた笑った。
「うん、テレビの中で、あるかもね。」
そう言い残してタバコの火を消し、視線はソコに残したまま、私に背を向けお店に入っていった。