第23章 23日目
土曜日、お休みの日は何をしていいかわからなくなる。これを機に(何を機に?とか突っ込んでくれる人もいないし)習い事でも始めようかな。
そうとなれば検索です。
今や全く鳴らない携帯を触った。「習い事 種類」と打ち込み、「検索」を押そうとした時、
久しぶりに見る名前に驚いた。
本当だったら電話に出るか迷うところなのに「検索」を押そうとしていたその指が、そのまま「通話」を押してしまった。
「え!あ、やっ」
まずい、押してしまった。心の準備が出来ていません。
『・・・?』
電話の向こうで小さく聞こえるその声に
また動揺する。
「・・・も、もしもし」
『うん、俺、二宮です。』
知ってるよ。番号、消してると思ったの?
消せないよ、消せるわけ・・・
「う、ん・・・」
だめだ、泣くな。
『・・・、』
二宮くんの久しぶりに聞く私の名前に
少し前までは当たり前だったその呼びかけが
今じゃこんなに凄いことに感じる。
「にの、みやくん・・・っ」
どこにるの、何してるの、大丈夫なの、元気なの、
私のこと、もう好きじゃないの
頭の中では伝えたいことが沢山あるのに
「・・・っ」
『ちょっと、会えない?』
「・・・え、」
『話したいことが、あるんだ。』
「・・・うん、」
30分後、二宮くんの車が家に止まる。久しぶりに見た二宮くんは「久しぶり」と言って優しく微笑んでくれた。