第23章 *タイムリミット feat.笠松
「はっ、はいっ!?」
ドアに触れた指がびくんと跳ね上がって、心臓がばくばく言っていた。
最初は驚いたからだったけど、笠松くんの声だって分かったら、途端に恋の鼓動に変わる。
私の名前、知ってたんだ。
しかも、呼び捨てで呼んでくれた。
…すごく嬉しい。
「傘、ないんだろ…?」
「う、うん。…何で知ってるの?」
「さっき、友達に言ってたから…。…それで、俺、持ってるから……」
さっきまでと変わらず机を見てるのに、どこか焦点が合ってない。
シャーペンを持つ指先が震えてる。
そういう細かいところに、笠松くんの精一杯さを感じた。
「──もうちょっと、待ってろ」
女子が苦手なのは知ってる。
優しくするのに慣れてないのも知ってる。
でも、それ以上を期待しちゃダメ?
近くの席に座ってても、何も言わずにいてくれた。
話しかけた時だって、ちゃんと返答してくれた。
傘を忘れたことも、分かってくれていた。
「…隣、でもいい?」
「……好きに座れよ」
隣にいることを、許してくれた。
今はまだ言えないけど、帰り道の別れ際に、好きって言ったら。
笠松くんも、同じ答えを返してくれる?
*タイムリミット*
この気持ちを整理するまで。
伝える準備ができるまで。
あと何分、残されてますか?