第23章 *タイムリミット feat.笠松
放課後の図書室は、2人だけの場所になっていた。
激しく降る雨は、朝から予報されてたらしい。
ほとんどの人は晴れのうちや、傘をさしたりして帰っていった。
その中で、家より勉強に集中できるからという笠松くんと、傘を忘れた私だけが長居していた。
そうは言っても、私は困ってるわけでもないけどね。
笠松くんのことは前から気になってて、目で追ってるうちに好きになったから。
話すきっかけとしては、今が最大のチャンス。
「か、笠松くんは…勉強得意なの?」
あっ、でも、努力してるしそういうのは関係ないかな?
しかも、苦手な私が訊くのもどうなんだろ…。
笠松くんの反応を待つ間、たくさん考え込んでた。
けど、質問の内容よりも、
「……違う」
会話を続ける方法を、考えるべきだったかもしれません…。
「そ、そうなんだ。じゃあ苦手?私も──」
「違う」
「…?あ、どっちでもないってこと?そうなんだー、私は苦手だよー」
「………」
「ぶ、部活楽しい?」
「ああ」
「そう…」
「………」
「………」
いっそ話しかけない方が良かったのかな。
女子が苦手とは聞いてたけど、ここまでなんてなぁ…。
タイミングも勉強中だったし、迷惑もかけたかもしれない。
「ごっ、ごめんね、私そろそろ帰るね…」
傘もないくせに、その場にいるのが辛くなって、そそくさと図書室を出ようとした。
やっぱり、好きでいても、付き合うなんて無理だ。
笠松くんとの会話が続かないから、じゃなくて、私がそれに耐えきれないから。
自分から逃げるなんて、もってのほか。
「じゃあ、勉強頑張って…」
愛想笑いでごまかして、ドアに手をかけた時。
「──っ遠野!」