第20章 *第2印象 feat.伊月
放課後、体育館に向かって、いつものように中央階段を駆けていた月曜日。
俺は、たった1人で階段掃除をする彼女を見つけた。
確かあの人は…頭がいいって噂の遠野さん。
交友関係は広くはないようで、ほとんど廊下にいるのを見かけない。
だから目にした回数も10回未満だと思うけど、真面目そうな子だなってのは知っていた。
周りには談笑をする生徒が多数で、どの人が掃除をサボってる人なのか、区別がつかない。
それでも遠野さんは、文句も言わず、ただ淡々と掃除していた。
頭で考えるより先に、体が動く。
「遠野さん!手伝おうか?」
突然話しかけられて、小さくだけど反応を見せる。
少し怯えてるみたいだ。
こういう風に話しかけられるのは、いつもからかわれる時だったのかもしれない。
「…もう少しで終わるから、平気」
「あ、それもそっか。じゃあ、明日から手伝ってもいい?」
「……ありがと」
言葉でこそお礼を伝えているものの、目は「明日になったら忘れるくせに」と言っている。
その誤解を解きたいとか、そういうんじゃなくて。
ただ、遠野さんに笑ってほしいと、なんとなくそう思った。