第16章 *お前が素直すぎるから feat.日向
コンコン、と扉をノックする音が聞こえて、少ししてからゆっくりとドアが開く。
俺の部屋に入ってきたのは、風呂上がりの遠野だった。
「日向くん…あの、お風呂ありがとうございました…。」
ぺこっと小さく一礼する遠野は、諸事情により俺の弟のぶかぶかなTシャツを着ているため、胸元が見えそうでハラハラする。
「お、おう。全然。平気。」
こういうのに全く耐性がない俺は、どきまぎしまくっていた。
今日こいつと一晩過ごすなんて、考えるだけでくらくらしてくる…。
*
思い起こせばそれは、日常の中のプチハプニング程度だった。
部活帰り、日が長くなったとはいえ薄暗い道を歩いていると、遠野がふらふらと歩いてくるのが見えた。
しかもよく見ると不安げに涙を零してて、話を聞くに鍵をなくし、親は今日帰ってこないらしい。
放って置けなくなった俺は、親に事情を話し、うちに泊めることに。
親はすぐにOKしてくれたけど、唯一面倒だったのは彼女か彼女かとしつこく訊いてくることくらいだった。