第12章 *内緒話 feat.氷室
「ごめん、ちょっとだけ耳貸して?」
突然のことに困惑する私だったけど、よく分からないまま、言われた通りにした。
今思えば、これが正解だったような気もする。
ともかく、氷室くんは私の耳に口を寄せ、小さな声で話し始めた。
「俺と今隣の子って、2回連続隣なんだけど」
「う…うん。」
これって…もしかして。
その子のことが好き、とか?
そうだったら…もしそうだったら、聞きたくなんかない…。
でも、そんなこと言ったら不審に思われてしまいそうで、言い出せない。
ぎゅっと目を瞑って、覚悟を決めた。
「でも俺は、遠野さんが隣の方が嬉しかったかも。」
……え?
「わ、私が…って、え?」
「…これ、誰にも秘密だからね?」
内緒話をやめて、にこっと微笑む氷室くん。
その表情は、一見普通の笑顔のようで、実は嬉しさや恥ずかしさ、色んな感情が混ざっていて。
「…うん、分かった。」
この時の私の表情も、きっと氷室くんとよく似てたんだろうな、と思った。
*内緒話
誰にも内緒の2人話。
そこに隠したのは、
私と彼の、両片想い。