第11章 *変化と相変わらず feat.高尾
「そ、そう言う真太郎は、顔変わらなすぎなの…!なんで少しも照れないの!?」
いつもと変わらない調子なようで、どうやら本気で怒ってるようだ。
真ちゃんが気圧されたように、言葉に詰まる。
ところが、さっきの勢いから一転、遠野さんは弱々しく言った。
「…本当に嫌いって言われたみたいじゃない…」
遠野さんがどんな表情をしてるかは逆光で見えないけど、真ちゃんは、ハッキリとそれに答えた。
「香奈、俺はお前が好きだ」
「…!」
突然の告白に、遠野さんがうろたえる。
「嘘じゃなくて、本当に好きなのだよ。だから、抱きしめてもいいか?」
「えっ!?そんな急には、ひゃう!?」
遠野さんの動揺を無視して、真ちゃんは遠野さんを抱きしめる。
2人の影の境界線が、見えなくなった。
「し、しんたろ…?ど…ドキドキしてる…」
「これでも照れてないと思うか?」
「…ううん」
俺には聞こえない真ちゃんの心音は、意外にも早いらしかった。
2人の雰囲気に、恥ずかしくて目をそらしてしまう。
──これ以上は気づかれそうだし、教室に戻るかな。
俺は、自分のことじゃないのに少しドキドキしながら、階段を下りるのだった。
*変化と相変わらず*
去年の今日から1年間。
これは、少しの変化があった1人と、
相変わらずな1人のその後の話。