第11章 *変化と相変わらず feat.高尾
「香奈、視界から失せろ」
「真太郎、気持ち悪いから死ね」
登校中。
自転車をこぎながら、俺──高尾和成は、後ろで交わされる2人の会話を聞いて、去年のことを思い出していた。
ちょうど1年前の今日も、エイプリルフールだった。
そこで2人はお互いを嫌いと言い合い、でも、最終的には付き合うことになったらしい。
今年も嘘つくのかなーと思ってたけど…まあ、予想通りだ。
「お二人さーん、いい加減、イチャつくのやめてもらえませんかね〜?」
「「イチャついてない!」」
「息ピッタリじゃん…」
後ろは見れないものの、ジト目を向ける俺。
そんな俺の視線に気づいたのかはさておき、2人はその後も、お互いに対する悪口を続けた。
…しかし、秀徳高校が見えてきた頃。
急に2人が静かになったと思ったら、遠野さんが、真ちゃんに小さな声で言った。
「…昼休み、屋上前の階段に来て」
ま、偶然とはいえ聞こえてしまったわけで。
これは行くしかないっしょ、と思い、笑いをこらえるのに必死だった。