第2章 *似てるようで、違うような feat.笠松
夜ご飯を作った後、一人で食べるのは嫌でお兄ちゃんの帰りを待っていたら、寝てしまうことはよくあった。
その度に、お兄ちゃんは私を優しく起こしてくれた。
「香奈ー、晩飯食おうぜ。」なんて言って、ニカッって笑って。
だから、親が出張でほとんど帰ってこなくても、寂しくなかった。
あれから数年。
お兄ちゃんは秋田の高校に進学したから、もう家にはいなかった。
一方の私は、お兄ちゃんを追いかけることもなく、今は海常高校一年生。
でも、お兄ちゃんが秋田に行く日はあんなに泣いていたのに、私は前と変わらず、寂しいとは思っていなかった。
それは多分───
「香奈、起きろ。」
…幸君がいてくれるから。
「ん…。幸君、おかえぃ〜…。」
「ただいま。」
ウトウトとしながらそう言うと、いつもちゃんと返してくれる。
「晩飯一緒に食おうかと思ったんだけど、まだ眠いか?」
「んーん、起きる…。ていうか、動けないから起こして…?」
「しょうがねぇな…。」
両手を上に上げてのおねだりも、小さい頃から変わらない。
幸君は呆れ顔をしながらも、抱きしめるようにして起こしてくれた。
思わずそのまま抱きしめると、「おい、俺腹減ったんだけど。」と怒られてしまう。
「はーい。じゃあ、あと3秒だけ…。」
寝起きの消え入りそうな声でそう言った後、5秒数えて離す。
「3秒じゃなかったのかよ。」
言葉ではそう言いつつ、表情は優しく笑ってくれる幸君に、私も笑い返した。