第7章 *ツーショット feat.紫原
「ね、紫原くん。」
「なにー?」
「もっとこっち来て?」
あたしが思いついたのは、銀杏を背景に紫原くんとあたしのツーショットを撮ろう、ということ。
だから何の気なしに言ったんだけど、紫原くんは甘えられたと思ったみたいで。
「そ、そんな近かったら、昼飯食えないし!そういうのは後に…」
「や…!お願い、少しでいいから…。」
「〜〜っ!…そこまで言うなら、しょうがないな…。」
紫原くんが勘違いしてるとも気づかずに、あたしはとんでもない発言をしたようだ。
紫原くんが近くに来てくれたのはよかったけど、いざ写真を撮ろうとした時。
視界が暗転した。
パシャ、と少し遅れてシャッター音が聞こえる。
それは気絶したわけでも何でもなく、紫原くんにキスされたからだった。
「…え?」
「そっちから言い出したんだから、今更ダメとか言わないでよねー。」
余裕そうな口振りだけど、真っ赤な顔がそれを照れ隠しだと気づかせる。
二人の真っ赤な顔を冷やすように、秋らしい涼しげな風が通りすぎた。
*ツーショット*
カメラに映ったのは、
友達みたいな二人じゃなくて、
誰にも見せられないような一瞬。