第6章 *hold feat.笠松
「…え?」
「し、仕方なくじゃねえから。俺だって、ずっとこうしたかったんだよ…。」
繋がれた手と、真っ赤な笠松先輩の横顔を見て、疑問が浮かぶ。
「笠松先輩、手を繋ぐのが嫌いって言ってませんでした?」
「言ってたけど…。本当は嫌いなんじゃなくて、ただ…──」
その後少しずつ話してくれた笠松先輩曰く、人…特に女の人に触れるのは苦手だけど、私にだったらどうにかこうにかできるらしい。
今まで踏み出せなかったのは、人前で恋人っぽいことをするのが恥ずかしいだけだったとか。
「そ、そうだったんですか…。言われてみれば確かに、人前でそれっぽいことはしなかったかも。」
そう呟いて思ったのは、理由を聞いたら、思ったよりもスッキリしたってことだった。
私、結構悩んでたんだな…と、今更ながら気づいた。
でも、そういうことなら、正直に「手を繋ぎたい」って言っても良かったかもしれない。
そう思ってちょっぴり後悔したけど、
「慣れるように努力するから…その、これからは、繋ぎながら歩いて…いいか?」
そんな後悔さえ消してしまうほど、その言葉は私をときめかせた。
「もっ…もちろんですっ!」
真っ赤になった顔を隠すように、必死に笑顔で返した。
*hold*
何気ないのに、
手を繋ぐだけで、
一目で恋人って分かるね。