第6章 *hold feat.笠松
すぐ隣にいて、手が届く距離。
それでもこの手を伸ばさないのは、笠松先輩が嫌がるからだ。
キスもデートも、お泊りだってしたのに、笠松先輩が一つだけ嫌がる行為がある。
…それは、手を繋ぐこと。
前に「何で手を繋ぐのが嫌なんですか?」って訊いたら、「元々人に触るの苦手だし、一瞬で終わらないだろ」って言われた。
特別必要なことだとは思わないし、笠松先輩がやりたくないならそれでいいと思う。
だけど、何かが物足りなかった。
「…香奈?何ぼーっとしてんだよ、大丈夫か?」
「へ?ああ、考え事してました。」
「そうか。体調悪かったら言えよ?」
「はぁい。」
笠松先輩は優しくて、嫌われちゃうかもなんて心配したことは、付き合い始めてから全くない。
でも、何でか安心しないんだ。
高望みしすぎなのかな。