第1章 少女01
「じゃあーテツヤ君、もう体調も良さそうだし予定通り退院っていうことでご両親にお話してきて。私も先生と話してくるわ。」
テツヤ君。
そのワードに一体何が込められていたんだろうか。私には皆目検討がつかない。
高鳴る心臓、荒くなる息遣い。
振動するような脳。
そして、
私が漫画をめくり、黄色い声をあげている音。
その漫画には確かに『黒子のバスケ』というロゴが描かれている。
そうか・・・・。
私は誰も聞こえないように小さくそうつぶやいた。
ページをめくる音はなりやまない。まるで風に吹かれたようにパララと頭の中でめくられていく。
ここは私の世界ではない。
・・・ー黒子のバスケの世界。
春らしき優しい風が、カーテンを揺らした。
1-01/end