第1章 少女01
1-04:タオルと風の供給量
さて・・・自宅に帰ってこれたまではいいものの、どこから手をつければ良いのやら。静寂の中、時計の音だけがやけに大きく響く。
(さ、寂しくなんか・・・ない。ない、はず、なんですけど、・・・・。)
少し開けた窓から入る風が、小さな音を立てながらカーテンを揺らす。近くにあった椅子に座った。
全くしゃべりもしないような人がいなくなっても、やっぱりこう。
(・・・・・なんかさみしいぃいいいい。)
座った椅子のセットであろうダイニングテーブルにドンと顔を打ち付けた。
(これからどうするつもりだったんだっけ、私は・・・。)
チク、タク、チク、タク・・・。
(よくよく考えたら、私って自分の全く知らない世界に来てるんだよねー・・・。)
私が心から信頼できる人間なんて正直いない。付き合ってきた年数のせいだ。ここの人間は見たことがあるだけで仲を培ったことはない。
(そりゃあ?相手はさ、私を知ってたりするかもしれないけど・・・。私自身はどうすればいいか全くわかんないわ・・・。)
1人になって始めて現実に引き戻された感じがする。
「さーみーしー・・・。」
そんなこと1人で言ったって部屋に木霊するだけだった。
今はとにかく、母の味も味わえなければ本当の自宅の匂いも感じられない。
(あ、泣きそう。)
目が濡れた感じがする。止まらなくなって行く。これは、俗にいう、泣いてるってやつですかね。
「う・・・・・、っ、ぐっ・・・・。」
大声で泣くのを抑えると、呻き声にも似た声が出てくる。泣くって案外こう、理屈なく出てくる出てくる・・・・。
「うぅ〜・・・・、っくぅ。」
グズグズと顔をへばりつけたまま泣いていると、そのうち私は眠りについた。
私のしゃくりあげる声と、堪える呻き声が針の音に溶けていく。そんな虚しい音色も、子守唄に変わるかのように遠くなっていったのだった。