第1章 Trick or Treat?
次に向かったのは敦の家。
「やっほ〜、ゆかち〜ん」
「敦、お待たせ!」
インターフォンを鳴らすと出て来たのは、緑色の衣装に身を包んだ巨人。
うん、緑の巨人だ。
「敦のコスプレって、もしかしてピーターパン?」
「そうだよ〜。姉ちゃんにハロウィンのこと話したら、用意してくれたんだ〜。何でピーターパンなのかは知んないけど」
「へぇ〜、そうなんだ♪」
敦は分からないって言うけど、私には何となく分かる気がした。
敦はこんなに体が大きいけれど、中身はすっごく子どもで、お菓子のことになるとすぐ釣られたり、面倒臭がるくせに負けず嫌いだったり、本当に子どもそのもの。
そーゆーところが可愛いんだけどね。
本人には拗ねちゃうから言わないけど。
そんな敦には、永遠の少年というピーターパンがピッタリかもしれない。
ただ、見た目の迫力は少年要素の欠片も無いけど。
「敦がピーターパンなら、ティンカーベルのコスプレすれば良かったなぁ…」
「うーん、それも良いけど〜。俺はゆかちんなら、ティンカーベルよりウェンディーが良いな〜」
「どうして…?」
「もしそうだったら、俺がゆかちんのこと迎えに行ってあげられるでしょ〜?」
「敦…」
何て可愛いことを言うんだ、この巨人は。
いや巨人じゃない、敦は妖精さんだ。
誰が何と言おうと、この私の目の前でふにゃりと笑っている敦はフェアリーそのものだ。