第1章 エルヴィン・スミスの野望
エルヴィンの言葉にミケは顔を上げ、
大きく目を見開いたのがわかった。
それを見たエルヴィンは目を細める。
――ミケ・ザカリアスは『同志』になる、と。
父親が死んでからずっと被っていた仮面を外し
他者に晒すことは、賭けに等しい。
「アイツは危険思想を持っている」などと吹聴されて
第一憲兵に通報されようものなら、
今度は自分も消されるかもしれない。
だが、リスクを犯さなければ得られないものもあるのだ。
自分の勘を信じ、命をチップに賭けに出るしか前進出来ない。
「ミケ・・・俺と共に戦ってくれないか?
俺はこの世界の真実が知りたい」
「・・・・・真実・・・?」
「そう、何故俺達はこんな壁に囲まれた世界で生きることになったのか、
一体誰が壁を作ったのか、巨人とは何か、
壁の向こうに何があるのか・・・俺は知りたい」
エルヴィンの言葉にミケは暫しの間、
沈黙していたが恐る恐ると言った様子で口を開いた。
「何故俺に声を掛けた?他にも優秀な奴はいっぱいいる」
「そうだね、他にも優秀な訓練兵は沢山いるけど、
彼らではダメなんだ」
「何故そう思う?」
真剣なミケの眼差しを受けたエルヴィンは口の端を吊り上げる。