第1章 エルヴィン・スミスの野望
――ある日、
エルヴィンが鍛錬の為早朝の森をランニングしていると、
草陰に人影が見えて足を止めた。
こんなに朝早くから自分以外の人間が
外にいるとは思わなかったので、
「一体誰だろうか?」と近づくと、
大柄な体格を小さく丸めながら草花の匂いを嗅いでいる人物がいた。
それを目にして、エルヴィンは頭に叩き込んだ同期の顔を
すぐに検索する。
・・・あれは確か『ミケ・ザカリアス』。
実技ではトップの実力を持つ男だ。
エルヴィンはまだ彼と話した事が無かったが、
噂話はよく聞こえてきた。
無口で何を考えているかわからない男。
人の匂いを嗅ぐのが大好きな変人。
「・・・・・・・・・・・・」
エルヴィンはニィッと口角を吊り上げると、
意気揚々とミケに歩み寄った。