第1章 エルヴィン・スミスの野望
―――エルヴィン・スミスは十二歳になると同時に
巨人を倒すための技術が学べる訓練兵団に入った。
死んだ父親が自分に語った真実を証明するため、
エルヴィンは只管仮面を被った。
聞き分けの良い子供を演じる道化の仮面だ。
我ながら薄ら寒い事をしているなと自嘲するものの、
「賢く生きろ」「笑顔は時として武器となる」と教えてくれた
運命の人を思い出せば自然と荒れた心が凪いで、
冷静になれた。
自分はまだ自分の身すら守れぬ弱く脆弱な生き物だ。
実力とある程度の地位を手に入れるまでは
大人しくしているべきだろう・・・。
・・・そして、志を共にする仲間も必要である。
自分一人の力では人間にも巨人にも勝てない。
だからエルヴィンは冷静に同期入団者を観察していた。
一見人当たりの良いエルヴィンには沢山の同期は話し掛けてきた。
誰も彼もその顔に絶望や負の感情が見えず、
意識せずとも「これは違う」と判別してしまう。
凡人ではダメだ。
自分と同じ匂いのする人間でなければ共に道は歩けない。
平和ボケした子供にエルヴィンの道は耐えられないだろう。
過酷な訓練に耐えながらエルヴィンは
知識と体力を蓄えていった。