第4章 エルヴィン・スミスは未来へ突き進む
「貴方知ってる!エルヴィン・スミスでしょ!?
有名だもん!」
――有名・・・。
昔から俺は何故か人に噂されやすい。
今度が一体どんな事で有名なのだろう?
流石にもう片っ端から女を食ってはいないので
女性関係ではないと思うのだが・・・・。
「女性兵士がエルヴィン班長は超格好良いって言ってたよ」
あぁ、そっちか。まだ可愛らしい噂で良かった。
「でも、あたし的にはそんな事どうでも良いんだ。他に興味がある」
どうでも良い・・・
その言葉に俺も初めてその兵士を真正面から見据えた。
笑顔を浮かべているはずなのに、
メガネの奥の双眼が怪しく光っているように見える。
「あたしが興味あるのは、貴方が訓練兵時代に提出したレポート。
あれ、かなり故意にぼかして書いたでしょ?」
その指摘に俺は目を見開いて驚いた。
訓練兵時代に書いたレポートがあるのだが、
あまり大っぴらに書くと面倒なことになると判断したため
『分かる人には分かる』細工を施して提出していた。
自分もそのレポートの存在を今の今まで忘れていたのだが、
目の前の新兵から言われてやっと思い出した。