第3章 ミケ・ザカリアスから見たエルヴィン・スミスの恋愛
暫くの沈黙の後、ナイルは茶化すように声を上げる。
「何だよ、おまえ誰か好きな奴でもいんのか?」
「そうだと言ったら?」
真剣な表情で即答するエルヴィンにナイルも俺も絶句した。
まさかもう既にエルヴィンに好きな奴がいるとは
思わなかったからだ。
これはもう『好きなタイプ』ではなく『好きな人』の話だ。
「で、で、で、で?その好きな奴って、
どこのどいつなんだっ!?兵団にいるのか!?」
硬直した俺とは正反対にナイルはその話に食いついた。
多分エルヴィンを誂えるネタが欲しいんだろうが、
こいつはそんなに甘いやつじゃない。
いくら好きな奴がいたとしても、
エルヴィンの抱く野望が揺らぐとは思わないし、
そういう色恋沙汰は容赦なく切り捨てるだろう。
エルヴィンはそういう奴だ。
ナイルの質問にエルヴィンは曖昧な笑みを浮かべて言い淀む。
「兵士じゃないみたいだ・・・・」
「ほう、一般人か!どこで出会ったんだ?」
「路地裏」
「・・・・・・・随分と変わった場所だな」
「そうだね」
ははは、と笑うエルヴィンの顔が恐かった。
よくわからないが直感でそう思ったんだ。
ナイルはその事に気づいてないようで更に話を進める。