第3章 ミケ・ザカリアスから見たエルヴィン・スミスの恋愛
「で、どこの女なんだ?普通の町娘か?」
「いや・・・多分違うよ」
「多分って何だよ。じゃあ商会の娘か?
ま、まさか貴族って事はないよな!?」
「さぁ・・・・」
はぐらかすエルヴィンにナイルは「勿体ぶるなよ」と言っていたが、
俺には本当にエルヴィン自身、相手の事を知らないんじゃ・・・?
という思いに駆られた。
「もしかして一目惚れでもしたのか?」
俺がそう言うとエルヴィンはその相手を思い出すように
目を細めて「そうだよ」と笑った。
「意外に一途なんだな」
「失礼だな。二人共俺のことを何だと思っているんだ?」
そこら中食い荒らす肉食獣、とは思ったが言えなかった。
正直恐い。
「彼女は・・・俺の運命の人だからね」
エルヴィンはこの上なく幸せそうに笑った。
その表情がとても優しいもので、
俺とナイルは「その相手と結ばれると良いな」と
素直に思えた。
印象的だったその思い出も、訓練兵団を卒業し、
調査兵団に入って巨人と対峙する内忘れ去っていた。
でも、あいつが現れて・・・
俺は久し振りにこのやり取りを思い出したんだ。
銀髪碧眼で、人形のように小柄な・・・
とても強い・・・・・・・・・・・・・
男だったがな。