第2章 Chapter 1
「…っ!」
アンベルは急いで視線を巡らせた。
もしや、アースト!?
しかし、辺りにそれらしきものは見当たらない。
再び左目に手を当て、更に広い範囲を捜索してみる。
アンベルの金色の瞳は、邪魔な校舎や木々をすり抜け、広大なディファクター養成学校の学区内全てを見渡せた。
……………いた!
校舎裏、人目にあまりつかないような所で女子生徒二人が大型のアーストを前にして、腰を抜かしていた。
「アンベル先生?」
いきなりキョロキョロしだしたアンベルを不思議に思ったのか、リヴァが首を傾げる。
「あなたは絶対にここを動かないでください!」
そんなリヴァを置き去りにして、アンベルは校舎裏へと急いだ。
駆けつけると、ちょうどアーストが女子生徒に拳を降り下ろそうとしていた。
アンベルは女子生徒とアーストの間に入り、その拳を腰にさしていた剣で受け止める。
「あ、ああ……アンベル先生…」
恐怖のためか、生徒たちは上手く呂律が回っていない。
「早くここから立ち去りなさい!死にたいのですか!」
そう叱咤すると彼女たちはビクッと体を震わせ、フラフラしながらも支えあいながら逃げていった。
アンベルにとって、二人を庇いながらこの程度の敵と戦うことは容易だったが、二人はディファクター候補生だ。
実際にアーストを前にして何も出来なかったことが知れれば、彼女たちはもうこの学園には居られないだろう。
実際の戦闘中でも作戦や指揮を任されることの多いアンベルは咄嗟に女子生徒たちの未来を考え、この場から逃がしたのだ。