第23章 西東京大会決勝

レフト前の大きな当たりがあったが、降谷君のホームへの返球によって追加点は阻止できた。

(けど、2アウト満塁)

ここで稲実の勢いを止めなければならない。

「！」

勢いのある打球が飛ぶ。

(ダメだ、これは転がる場所が悪い！ センター前……)

それでも亮介先輩なら！


その時、私の脳裏に先ほどの亮介先輩が思い浮かぶ。

(もし、亮介先輩が怪我をしていたとしたら……)

亮介先輩はボールを必死に追い、飛び込むが……ボールはグローブに軽く弾かれた程度。

「倉持！！」

亮介先輩の後ろに回り込んだ倉持が、片手で勢いの死んだ打球をとる。そして、そのままセカンドベースを踏み……


『アウトー！！ スリーアウトチェーンジ！！！』


青道応援席から雄叫びが上がる。誰もがその二遊間のプレーを賞賛する。敵も味方も関係ない、こんなプレーはあの2人にしかできない！！

「7回表！ 勢いはこっちに来てます！！ 応援頑張りましょう！！」

喉が痛い、体が熱い。でも何だろう、この高揚感は！



しかし、7回表も得点ならず。結城先輩が3打席連続で出塁できていない。しかも、丹波先輩が足を捻ったのか、様子がおかしい。

(丹波先輩はもう限界。でも、投手交代だとしたら誰を？ 降谷君を外野から戻すのか、川上君を登板させるのか)


『7回裏、青道高校選手の交代をおしらせします。8番丹波君に代わりまして、ピッチャー沢村君』

予想外の登板だったけれども、沢村君は5番バッターの鳴を3球ともインコースへ投げてねじ伏せた！！

続く8回の攻撃では降谷君も負けじとライト前ヒットを放ち、沢村君の絶妙なバントで進塁。白州君も強い打球を放ち、1塁セーフ！

(1アウト1、3塁……続くバッターは倉持。スクイズもある)

倉持は見事にスクイズを成功させ、青道に待望の追加点が！！

(すごい！ すごいよ倉持！！)

そして、次のバッターは亮介先輩……じゃ、ない。

「代打春市っすかぁ？！」

リューマが驚きの声をあげる。そういえば、同じクラスだとか言っていたような気がする。

「こんな大事な場面で兄ちゃんに代わってバッターとか、あいつすっげえ！」

鳴のことだから、1年代打に打たれるなんてプライドが許さなそう。ヤケになるかもしれない。
初球、春市君の木製バットが動いた！