第1章 始まりのホームラン
今日も、なんの収穫もなく過ぎていく。
高校1年生になってから初めての夏休み。私は帰宅部のため、部活動で青春の汗を流すこともなく、学校の夏期講習に出るだけであった。
(私は一体、何がしたいんだろうな)
頭上からも、足元からも暑さが私を襲う。アスファルトよりかはマシとはいえ、グラウンドの土の上もなかなか熱いものだ。
8月下旬というのにも関わらず、容赦なく照りつける日差しは目の前にいる野球部にとっても天敵だろう。
(性懲りもなく、私はまたここに来ちゃったな)
好きなんだ、運動が。
好きなんだ、ソフトボールが。
好きなんだ、野球が。
運動することが叶わないこの体になっても、私は諦められないんだ。
「だって、大好きだから……」
私は自分の左腰に手を当て、そっと目を閉じる。
(治らないのは、わかってる。けど、私も何か運動に関わることができないのかな)
「おいっ! そこの人! 危ないっ! 上っ!!」
誰だか、男子の声が聞こえる。随分と途切れ途切れの言葉だけど、意味は充分通じた。
見上げると、太陽によって影になっている……野球ボールが勢いよく私の元に飛んできた。
その時、私は……。