第3章 -誕生日-
わたしは誕生日が大好きだった。
2日違いの誕生日のお姉ちゃんと、
2日間だけ同い年になれるし、
大ちゃんとは大ちゃんの誕生日の
8月31日まで同い年になれたから。
でも、5才の誕生日の時のお母さんと
大ちゃんママの会話で
わたしの嬉しい気持ちは一変した。
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『でも、早いわよね。
すみれがもう5才だなんて。
明後日にはさつきも6才だし、
来年はさつきと大ちゃんはもう小学生よ。』
『ほんとよね。こっちも年とるはずよ。』
『すーも5才になったから、次は小学生?』
わたしの質問にお母さんたちは笑っていた。
『さつきと大ちゃんは、
もうすぐ6才になるから、
来年小学生なのよ。
すみれはまた1年後ね。』
『すみれちゃんはほんとに
さつきちゃんのこと大好きね。』
『やだ‼︎すーもお姉ちゃんと
大ちゃんと一緒に小学生になる‼︎』
わたしはヤダヤダと泣きわめき、
誕生日プレゼントもケーキもいらない‼︎
とスネて部屋に鍵をかけて閉じこもった。
ちょっと考えれば、
年の差なんか埋まらないんだから、
一緒に小学生になれないコトなんて
わかりきっているのに、
5才のわたしは理解していなかったのだ。
そして、部屋に鍵をかけて
誰も入ってこないのはいいけど、
さすがにお腹が空いて困り果てた頃、
今日のように窓から大ちゃんが来てくれた。
『すみれ‼︎』
『ふぇ…大ちゃ…⁇』
とっくに泣き止んでいたのに、
大ちゃんが来てくれて、
安心してまた泣いてしまったことを
わたしは今でも覚えている。
『すみれ、そろそろ腹減ったろ?
ケーキもご馳走もあるんだぞ?
オレも一緒に行ってやるから。な?』
『でも…』
『だいたいすみれだって、
早くさくら組になりたいって
言ってたじゃんか。』
『さくら組に大ちゃんとお姉ちゃんが
いなきゃヤダもん』
わたしが通っていた幼稚園は、
年長がさくら組で年中はゆり組だった。
『そっかぁ?
ゆり組のみお先生のほうが
オレはかわいくて好きだけどなぁ。』
大ちゃんはこの頃から変わっていない。
みお先生は…結構巨乳だったと思う。
『なんですーだけ違うの⁇
すーも大ちゃんと一緒がいいよ。』
わたしはまたメソメソしていた。