第3章 -誕生日-
ピロンピロン♪
明日からGWだからといって、
山のように出された課題に
塾から帰ってきて手をつけはじめていると、
さっきからやたら、
メッセージ受信の着信音が鳴っていた。
休憩がてらスマホを手に取り、
メッセージを確認する。
『HAPPY BIRTHDAY‼︎すみれ♪』
あ…。時計を見ると、
ちょうど0時をまわったトコロだった。
気がついたら、5月2日…
わたしの誕生日になっていた。
今年は…来ないかなぁ…
期待してないような、
でもやっぱり期待をして、
窓の外を見つめてしまう。
暫く見つめていたが、
諦めてまた問題集を開く。
ガラッ…。
「おっ♪起きてたのか。」
「大ちゃん‼︎どうしたの⁇」
期待してたくせに、
”どうしたの?”なんて聞くのも白々しい。
でも、わたしは恥ずかしくて、
そう言ってしまった。
「どうしたの…って…。」
「今年も覚えててくれたんだね。」
「まぁな。」
大ちゃんはちょっと照れたように
頭をポンポンとしてくれた。
「…ありがと。」
「つぅか、おまえ、
まだ勉強してたのかよ?」
大ちゃんはわたしの机の課題の山を見て
呆れて言った。
勉強していたのだから、
こっちは褒めてほしいくらいなのになぁ。
「だって課題たくさん出たんだもん。」
「ふぅん。とりあえず今は片付けろ!」
「え…?」
「え?じゃねぇよ。
今年もちゃんと来ただろ?
はぁ…オレがこんなんするの、
言っとくけど、すーだけだかんな。」
大ちゃんは優しい目をして、
わたしの頭を撫でてくれた。
いつも目付きの鋭い大ちゃんが、
こんなに優しい目をするのはわたしにだけ…
今日だけは…誕生日だもん…
少しくらい自惚れてもいいよね。
「で、15才はどうしたいんだよ?」
「う〜ん…どうしよっかなぁ。」
「つぅか…もう10年になるのかぁ。」
そっか…10年かぁ。
最初はわたしが5才の時だったっけ…
「あん時、おまえ泣きまくってたもんな。」
「その話はもういいから〜‼︎」
10年前の今日、わたしの5才の誕生日。
わたしはあるコトがキッカケで
大泣きして部屋に籠城した。
その日以来、毎年誕生日には大ちゃんは
ずっと一緒に過ごしてくれた。