第11章 -遅れてきた青色の彼-
思わず出てしまった心の声…
大ちゃんはジッとわたしを見ていた。
「じゃあ…しっかり見とけよ?」
「う…ん。」
一瞬、大ちゃんは怒るかと思った。
機嫌が悪くなっちゃうかと思った。
でも、大ちゃんは静かだった。
「オレのプレイ、見せてやるから…」
大ちゃんは何かを考えるように、
そこでことばを止めた。
「…大ちゃん?」
大ちゃんはわたしを見つめたまま…
「……大ちゃん?」
…ギュ。
…っ⁈
「だ…大ちゃん⁈ど…したの⁈」
体育館の入り口の横で、
わたしは大ちゃんに抱き締められていた。
わたしは大きな
大ちゃんの胸元しか見えないけど、
人はまばらとはいえ、
きっと周りの人に見られている。
は…恥ずかしすぎる…っ‼︎
でも、恥ずかしいと思う反面、
ドキドキが止まらない。
大ちゃんから直に伝わる
大ちゃんの胸の鼓動…
この大ちゃんの胸の高鳴りは、
これから始まる闘いを
楽しみにしているから?
不安に思っているから?
どんな想いもすべて…
わたしが受け止めてあげたい…
受け止めてあげるコトができたら…
そう思うのに、
わたしは大ちゃんの背中に
腕を回すコトができなかった。
大ちゃんはわたしを
必要としてくれているの?
だって…大ちゃんが好きなのは…
「すー…」
「…⁈な…なぁに?」
耳元で大ちゃんに名前を呼ばれ、
ハッと我に返る。
「試合…勝ったら…」
…⁈
大ちゃんの唇が、
わたしのこめかみに触れた。
そして、優しく、
また大ちゃんの唇は、
わたしの耳元へ近づいた。
「試合…勝ったら…
つぅか、勝つに決まってんだけど…
すみれ…おまえから…………しろよ?」
「…っ⁈」
大ちゃんはとんでもないコトを言うと、
もう一度ギュッと力を込め、
わたしを抱き締めてから、
やっとわたしを解放してくれた。
「ふぁ…ダリィ…。
ま、テキトーに行ってくんわ。」
大ちゃんは不敵な笑みを浮かべ、
わたしの頭をポンポンとした。
「今日はご褒美付きだしな。
ちゃんと観とけよ?」
大ちゃんは振り返らずに、
わたしに手を振り、
体育館の中に入って行った。