第6章 -緑色の先輩-
「会わせたい人って…?」
「あ!それって…‼︎
なになに⁈そういうコト⁈」
「高尾‼︎うるさいのだよ‼︎
早く出せ‼︎」
「はいはい。あ!すみれちゃん♪
コレ!ハイ!」
…?
高尾さんからメモ?のような、
小さい紙を渡された。
「ちゃんと連絡してね♪」
高尾さんはそう言うと、
ウインクしてから、
チャリヤカーを漕ぎはじめ、
緑間先輩はチャリヤカーの後ろから、
目線を少しわたしに合わせてくれた。
2人が見えなくなってから、
わたしは高尾さんがくれたメモを見ると、
そこには高尾さんの携帯番号と
メールアドレスが書かれていた。
…どうしよう。
とりあえず、制服のポケットに
そのメモをしまう。
「お…おい‼︎」
…⁈
わたしは声のするほうを振り向くと、
そこにはわたしのバッグを持った
笠松さんがいた。
「笠松さん⁈あ…わたしの!
すみません‼︎
持ってきてくださったんですか?」
わたしが駆け寄ると、
笠松さんは少しだけたじろいだ。
「あ…あぁ。
おまえ、戻ってこねーし…。
黄瀬も…」
「…‼︎きーちゃん…大丈夫ですか?」
さっきのきーちゃんの涙を思い出す。
きーちゃんにとって恐らく初めての…
”敗北”…だったと思う。
「あぁ。大丈夫だろ。
あいつもいつまでも
ウジウジしてる奴じゃねーだろうし。」
きーちゃんの話になると、
笠松さんはさっきよりも饒舌になった。
きーちゃんはこんなに理解してくれる
先輩と出会えて、幸せだなぁ。
「色々大変だと思うけど、
きーちゃんのコト、よろしくお願いします。」
「は⁈」
「あ…わたしが言うのも変ですけど…」
「おまえも大変だな。」
「え…?わたしは別に…。
笠松さんのほうが絶対大変ですよね⁉︎」
「ん…まぁ…な。」
笠松さんはため息をつきながら、
わたしにバッグを渡してくれた。
「ありがとうございました。
わたしでよかったら愚痴聞きますよ?」
「…⁈あ…あぁ。
じゃあ…そのうち頼むわ。
気をつけて帰れよ?」
そう言うと、
笠松さんは体育館へ戻って行った。
わたしもそのまま家に帰ったが、
その日からしばらくして、
青い彼…大ちゃんが
ご機嫌ななめになるなんて、
その日は夢にも思ってなかった。