第8章 【沈丁花讃歌】
「……お願い、僕を見て」
白澤は両手を紗英の
頬に当てがって、
互いの額を密着させる。
俯き加減に視線を
落としていた紗英が
ゆっくり、ゆっくりと
顔を上げて白澤を見ると──……
「キスしてもいい……?」
降り注いだのは深い口付け。
白澤が落とすキスは
今まで紗英が受け止めた
どんな物よりも甘く、
そして切なかった。
「紗英ちゃん」
角度を変えながら幾度も
紗英の唇を愛でて、
白澤は彼女の名を囁く。
「……紗英」
口内に入り込んでくる熱に
応えたくて、紗英は
自らもまた紅い舌を差し出した。