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(R18) 雑草ノ花 (壱) ─鬼灯の冷徹─

第8章 【沈丁花讃歌】


突如として室内を静寂が襲う。

白澤は切れた口の端を
そっと、親指で拭って
おどけてみせた。

「痛てて。またやられちゃった」

普段通りを装う
白澤とは対称的に、
紗英は複雑そうな面持ちだ。

「……御薬箱を」

小さく告げて、紗英もまた
部屋を後にしようとする。

しかし白澤はそれをさせなかった。

「待って」

「……っ」

紗英の細い身体を
白澤の強引な腕が抱き締める。

「……待って」

彼女の肩に
掛けられていた
鬼灯の羽織りは、

気付けば床に落ちていて
悲しげに畳を覆っていた。
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