第8章 【沈丁花讃歌】
だが檎の勇敢な一言は
功を奏し、鬼と神獣の
突掴み合いは終戦と相成った。
「……すいません、つい
我を失ってしまいました」
「あ、あはは……僕も、
襖壊しちゃってゴメンネ?」
心にも無いとは
こういう事を言うのだろう。
顔が完全にキレたままの
鬼灯と白澤は、建前だけ
取り繕って互いに背を向けた。
「では……ゴンさん
騒動の損害賠償はまた後日、
閻魔庁の方から
連絡させて頂きますので」
鬼灯はその言葉を最後に
部屋を去っていく。
取り残された檎は
無い脳味噌を振り絞った挙句、
「奴さん(若い男鬼)の
引渡しを手伝わにゃいかん」
と呻いて姿を消した。