第8章 【沈丁花讃歌】
まさに一触即発。
薄氷を踏むような
張り詰めた空気が場を支配した。
白澤は掴んだ鬼の腕を
未だに離そうとしない。
「……いい加減にして下さいよ、
うちの部下(バカ)を警察に
引き渡す手続きがあるんです」
淡々と、
しかし誰が聞いても分かる程
怒りを孕んだ声で鬼灯は話した。
対する白澤は
沈丁花に似た
朱色の目元を歪ませて、
鬼灯の胸倉に掴み掛かる。
「……も……だよ」
「は……?」
「そんな事どうでもいいんだよ!!」
後に檎は語る。
「白澤の兄さんが
あげに怒った姿を見たんは
アレが初めてじゃ」と──