第8章 【沈丁花讃歌】
「では私はこれで」
カン、カンッ
煙管を灰皿に打ち付ける
音が女郎部屋に響き渡る。
白澤の目に映るのは、
金棒片手に立ち上がる鬼灯と
涙目でへたり込むポン引き狐。
それから──……
明らかに鬼灯の物と分かる
羽織を肩にかけた紗英の姿。
「……っおい!待てよ!」
白澤は声を荒げて唸った。
骨が折れそうな程
強く掴まれた腕を
チラ、と一瞥して鬼灯は返す。
「事情ならゴンさんから
聞いて下さい……私は、
まだ仕事が残ってますので」
檎は心臓が縮む思いで
二人の睨み合いを見つめていた。