第8章 【沈丁花讃歌】
ポン引き狐は青ざめる。
「(いかん……紗英ちゃんの
写真外すの忘れとった……!)」
紗英は白澤のお気に入りだ。
太い上客が付いている
遊女は普通、他に客を取らない。
そんなことをして客を
怒らせでもしたら
店に大損害が出てしまう。
「(妲己様に殺される……!)」
経営者である妲己も
紗英の白澤専属は認めていた。
怒りを見せた時期もあったが、
彼女は遊女で在ると同時に
立派な経営者でもあるのだ。
ポン引き狐は考える。
「(まあ……ええか)」
何もよくないだろ!
と、後日事情を聞いた妲己は
顔面を修羅にしていたらしい。
(従業員のブログより抜粋)