第20章 密やかな幕引きを貴方と
少しずつ
少しずつ
紗英の身体が
橙色の光に包まれていく。
「……っ……紗英」
白澤は涙で霞む視界に
幾度もその手で愛した
紗英の姿を収めて、
最期の言葉を贈った。
「僕、待ってるから……!
たとえ君が僕を忘れようが
何処に生まれ変わろうが。
僕は……何度だって君を、
………愛してるよ。紗英」
紗英はまるで白澤の言葉が
終わるのを待っていたかの様に、
彼の愛を聞き終えると
眩い光の中に溶けていった。
声を上げて泣く白澤に
そして、声を殺して泣く檎に
地蔵菩薩がやんわりと告げる。
「無事に転生出来ましたよ」
こうして紗英は地獄を去った。