第19章 ワカレノウタ
「聞いたでしょう?
早く天国にお帰んなさい。
地獄(ここ)は……私達の
生きる場所なんですから」
鬼は人差し指で上を
指し示してみせて、
小生意気に首を傾げた。
まるで全身の血液が
沸騰したかのように
体が熱くなっていく。
目の前が真っ赤に
染まっているのは、
地獄の業火が
そうさせるのだろうか。
「……っお前さえ、
お前さえ居なければ!」
言いながら掴みかかった僕を
赤子の手でも捻るかの様に
払い除けて、鬼は拳を振り抜く。
痛い。痛い。痛い。
思わず涙が零れそうになって
僕は、その場を逃げ出すように
走り去ろうとしたんだ。