第18章 CHERISH YOU
彼女にとってこれが
本当の幸せなのかと
聞かれたら、
自信を持って「そうだ」と
答えられないから──……
そもそも人を愛するって
行為自体、殆ど初めてで。
男女の交わりという意味なら
愛し方は人並みに分かるけれど。
「貴女を幸せにする」
だなんて言っておいて
本当は、ただ自分が
幸せになりたいだけなのか。
そうなのかもしれない。
(でも愛してるんだ)
こんなにも
どうしようもなく
狂おしい程に
「……貴女が好きだ」
ぼそりと囁いた台詞に
貴女がちょっとだけ
瞼を動かした気がして。
私はそっと艶のいい
前髪を撫でてみるのだった。