第16章 【ティファニーで夕食を】
「好きだ」
一瞬時が止まったのかと
……本気でそう思った。
鬼灯様の声音も
怖い位の敬語も
全然、普段と
違ってたから。
驚きのあまりに
呼吸すら忘れて
身体を硬直させていると、
鬼灯様は少し気まずそうに
視線を逸らしてから
再び私に目を落とす。
「貴女のことが……好きです」
二度目の告白。
いつも通りの声で
ボソッとそう告げた鬼灯様は
目元が仄かに赤くなっていた。
男らしい親指が
私の下唇をそっと押し下げて、
薄く口を開く形にさせられる。
「……っ?」
無意識に荒くなる息。
それを必死で我慢して
彼を見上げると──……
「白澤(あいつ)を忘れる為でいい」
そう言って鬼は
私にキスをした。