第16章 【ティファニーで夕食を】
壁越しに聞こえる
シャワーの水音に
耳をすませば、
思い浮かぶのはやはり
鬼灯様の可笑しな一言で。
「私、脱ぐと結構
すごいんですよ?」
脱衣所からヒョコッと
顔を覗かせた彼は、
またもや突飛な台詞を
言ってのけてバスルームへと
姿を消したのだった。
(確かに……鬼灯様って
意外と鍛えてそうだな)
見慣れぬ高級ホテルの天井に
そんな下卑た想いを浮かべて
独り、自嘲気味に笑う。
ふかふかのベットと
初めての時差ボケ。
長時間飛行機に乗った
疲れもあるのだろうか。
私が眠りに落ちるまで
そう時間は掛からなかった。