第16章 【ティファニーで夕食を】
「それはそうと、私は
シャワーを浴びますが
貴女はどうしますか?」
一通りの荷解きを終えた
鬼灯様はキャスケット帽を
脱ぎ捨てるとそう言った。
薬の効果はすっかり
切れてしまったらしく、
額の角に加えて
尖った耳も
元通りになっている。
「あ……えっと、
私は後で入りま」
「一緒に入らないんですか?」
「……何を食い気味に
言い放ってるんですか」
「本望を」
この御人はいつもこうだ。
本気なのか
戯れなのか
可笑しなことを
平気で言ってのける。
その涼し気な表情が
なんとなく白澤様に
似ている気がして、
「……セクハラですよ」
私はそっと溜息を吐いた。