第16章 【ティファニーで夕食を】
「雇い主(妲己)さんに
怒られる時は一緒に
怒られてあげますから」
鬼灯様は言うだけ言って
機内に備え付けのイヤホンを
装着してしまった。
思いの外まつ毛の長い
横顔をジトッと見つめて、
私は観念したように前を向く。
「(……傷心旅行、か)」
ひとつひとつの椅子に
設置されたテレビでは
海外映画が延々と流されていた。
それから暫くして──……
いつの間にかうたた寝
していたらしい私は、
飛行機の揺れに
反応して目を開けた。
「……?」
何だか右肩が重い。
煙管独特の匂いと、それから
仄かにシャンプーの香りもする。