第15章 出発前夜
「痛ああ!」
突如として頭を突き抜けた
激痛に紗英は悲鳴を上げた。
「そりゃ痛いでしょうよ。
何せフルパワーですから」
「うう……鬼」
「元より鬼です。大体ね
遊女なんて辞めなさいと
散々言ったでしょう」
それ見たことか、と
言いたげに彼女を見据える
鬼灯は淡々と言葉を連ねて
更にもう一発デコピンをかます。
「痛!ちょ……っもう!
やめてよ鬼灯様の馬鹿!」
「親に向かって馬鹿とは
何ですか!もう一発!」
「うぎゃっ!」
その後暫く
鬼灯の地獄デコピンを
喰らい続けた紗英は、
「……鬼畜ジジイ」
赤くなった額を押さえて
涙ながらに呻くのであった。